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仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(を)128号 判決 1950年4月12日

被告人

門間佐多男

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人岡部秀温の控訴趣意第三点について。

按ずるに犯罪の情状は犯罪があつてはじめて考慮すべき事項だから犯罪の有無について争のある事按においては公訴事実に含まれない単に情状丈に関する前科調書の如きは所論のように証拠調終了後顕出するを妥当とすべきこと勿論であるが原審公判調書によつて被告人が公訴事実を全面的に自認之が補強証拠を取調べしたことを認め得る本件の如きは訴訟上犯罪の有無について既に裁判官が予断偏見を抱く余地がない段階にあるといえるので斯る訴訟段階において検察官が情状に関する事実として被告人の前科を述べ前科調書を顕出するもために訴訟上被告人の立場を不利にする惧なく寧ろ訴訟の促進に資する所以と解する。

(弁護人岡部秀温ノ控訴趣意第三点)

原審公判ニ於テ証拠調ノ手続ニ違法アリ

昭和二十四年六月二十九日ノ公判ニ於テ検察官事務取扱検察事務官ハ被告人ノ前科調書ヲ提出シテ証拠トナシタリ(記録二九丁、三十丁)

然レドモ前科調書ハ裁判官ヲシテ予断ヲ懐カシムル虞レアル情状ニ関スル証拠ナレバ之ガ証拠調ノ終了後ニ於テ為スベキモノナルコトハ起訴状壱本主義ヲ立前トスル新刑事訴訟法ノ精神ニシテ些ノ疑ノ余地アルコトナシ然ルニ事此ニ出デズシテ犯罪ノ成否ニ関スル証拠調ノ前ニ前科ニ関スル前科調書ノ証拠調ヲナシタルハ明カニ証拠調ノ法則ニ違反シタルノ違法アリ敍上ノ通リニテ原判決ハ破毀ヲ免レザルモノト思料ス。

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